あじさいを、撮りに行きたいと思った。
あじさいといえば鎌倉などが有名だが、私は6年前に見つけた「八塩あじさいの里」がお気に入り。ここには色とりどりのあじさいが咲き誇っているが、地元民しか知らないのか客はまばらだった。今回は「八塩あじさいの里」を紹介する。
新町駅から上野村ふれあい館ゆきのバスに乗る。電車が時間ギリギリに到着したから、走ってバスに乗り込んだ。そのままバスに揺られること1時間弱、「八塩温泉郷」バス停で降りる。そこから少し南に進むと、八塩あじさいの里の入口がある。
まず、神流川沿いに向かう。ここには以前、「八塩橋」という小さな橋があったが、令和元年(2019年)10月12日の洪水で流されてしまった。
現在、八塩橋があったと思われる場所にはパイロンが置いてあった。もちろん、ここから埼玉県側に行くことはできない。
ちなみに八塩橋は地理院地図上にはまだ残っている(学校の裏の小さな橋)。
八塩橋の近くにも、白いあじさいが可憐に咲いていた。
八塩橋の近くに、小さな祠があった。八塩八福神の恵比寿天だ。
七福神が有名で全国にあるが、八塩八福神では七福神のメンバーに加え、鬼の神様の福鬼神を加えて八福神となっている。
この恵比寿天は「神流の恵比寿」と呼ばれ、古来より神流川の豊かな恵みによりこの地の住民は豊かな生活が得られその守り神として信仰されたと言われている。
実に穏やかな笑みを浮かべている。
小川を越え、小さな山を登ると今度は福禄寿がいる。この福禄寿は「八塩南沢ささやき福禄寿」と呼ばれている。福禄寿は星の化身で、中国の神聖な仙人。長年にわたり、枯れることのないせせらぎの音、南沢に向かいそっとささやくと、子供に知恵と立身出世を授けてくれるそうだ。
この福禄寿も優しそうな顔をしている。
福禄寿に手を合わせ、先に進むとあじさいが咲き誇る開けた場所に出る。私が八塩あじさいの里で一番好きな場所だ。あじさいの中にある毘沙門天の鳥居もいい味を出している。
ここの毘沙門天は「南沢守り毘沙門天」と呼ばれている。古代インドの神話の神様であり中国に渡り、多聞天(北方守護神)として崇拝されている。古くから村民の守護神として南沢に祀られ、世相を清浄健全にする庶民に欠かすことのできない神で、村民も深く信仰していたそうだ。
毘沙門天といえば怖いイメージがあるが、この毘沙門天は目が丸くあまり怖く見えない。
一眼レフのシャッターを切っていたら、通りがかったおじさんに「ドラマチックな写真は撮れましたか?」と聞かれた。おじさんもカメラを持っていた。
2、3枚写真を見せて「はい」と答えたら、おじさんは満足そうにうなずいた。
弁財天の鳥居をくぐった先にもあじさいが続いていたが、白いあじさいが多い。白いあじさいは可憐で美しいが、シャッタースピードを下げすぎると白飛びしてしまうから撮るのが少し難しい。
白いあじさいがたくさんあると、綿毛みたいで綺麗だ。
ここの弁財天は「見合い弁財天」と呼ばれている。弁財天は元来水の神様で、日本に伝来してから音楽、知恵、学問の神様となった。
南沢の水の守り神として弁天山より分神され、弁天山と見合っているところよりこの名がつけられたと言われている。
弁天様は優しそうな顔をしていることが多いが、ここの弁天様は少しふくよかだ(女性に向かってふくよかは失礼かもしれないが)。
弁天様がいた山のふもとに、弁天池という小さな池を見つけた。魚はいないかと見たが、足の生えかけたオタマジャクシが1匹泳いでいるだけだった。
橋を渡る。
小さな東屋を見つけたので、そこで休憩する。あじさいは爽やかだが、撮影している私は汗だくだった。
ここの寿老人は「生長霊泉 寿老人」と呼ばれている。寿老人は中国の神聖な仙人で、星の化身で鹿を伴う。
八塩温泉の守り神の一人で、この霊泉を利用することにより、人の安全・健康が約束されるといわれ、不老長寿の神としても広く知られている。
この寿老人もとてもにこやかだ。
国道462号の橋の下をくぐる。
国道462号の橋のたもとに鬼の瓦があった。ここに「八塩山 大声ぇ福鬼神」という説明板があった。
昔、御荷鉾山に2匹の鬼が棲んでいた。これを弘法大師が護摩を修したところ、鬼はとんで神流川のあたりに至って石になった。
里人、これを大明神として祀った。など、ここには鬼の神話が数々伝えられている。
鬼は怖い顔をしているが、悪事を治め弱い人たちの味方でもあり、諸願成就の神と言われている。
南沢に向かい、欲張らず、願いを大声で叫べば願いが成就する、とのこと。
この鬼の顔は厳めしいが、神様と言われればそう見える気がする。
橋の下に野鳥観察小屋があるという看板を見たので行ってみたら、野鳥の写真が貼ってあるだけだった。
少し進んだら布袋尊がほほ笑んでいた。布袋尊は中国の唐の時代の禅僧で、八福神のなかでも唯一の実在の人物という。
福、そして宝を与えてくれる神様で、八塩の谷に風のように現れ、福徳を授けてくれる子宝、度量、円満の神である。
少し進んだら少し大きなお社を見つけた。「笑の大黒天」と書いてある。
文献によれば、最澄はここに来て緑野七倉の守護神として大黒天を奉祀したと伝えられている。
大黒天は、日本神話に登場する大国主命とも言われている。
ここの八福神はみんな笑顔だったが、この大黒天は笑の大黒天と言われるだけあって一番楽しそうな顔をしている。
笑の大黒天の少し奥に、大黒滝がある。誰もいなかったのでそっとマスクを外し、大きく息を吸った。空気がおいしい。マイナスイオンを感じる。
橋の下に戻ると八福神総社があるのに気がついたので参拝する。
御朱印もあった。
橋には八福神をモチーフにしたブリッジアートが描かれていた。
「あなたの願いを八福の神々に思いをこめて鐘をならしてください」
「いつまでもブログが書きつづけられますように」と思い、鐘をならした。
【~これにて写真館は終了~後はおまけコーナー】
あじさいの写真は爽やかだが、私は全く爽やかでなかった。とにかく暑く、汗をたくさんかいていたので温泉で汗を流したいと思った。この近くに「桜山温泉 絹の里別邸」という日帰り温泉施設があり、2回ほど行ったことがあったが、前日調べていたら閉館していたことを知った。川の向かい側には「白寿の湯」という温泉があり、八塩橋を渡れば簡単に行くことができたが八塩橋は流失。白寿の湯に行くには3km程度歩かなくてはならない。でもこの炎天下で何もないところを3km歩くのはきつい…。
気がついたときにはタクシー会社に電話をかけ、タクシーに乗っていた。というわけで白寿の湯までワープ。
汗を流したいのもそうだが、現在13時過ぎ、お腹が空いたので腹ごしらえを先にすることにした。暑くて食欲がないので冷やし中華を注文した。
夏野菜の冷やし中華は美味だった。
腹ごしらえをしたところで温泉に向かう。タオルのてるてる坊主が目についた。これはお客さんが忘れたタオルで作っているらしい。
白寿の湯はナトリウム・塩化物強塩泉で、地下750mの古生層から湧出する天然温泉である。あまりに源泉が濃いので湯舟のふちや床には褐色の温泉成分の結晶が、千枚田のような様相で堆積している。
体を洗い、湯につかる。暑いときに熱い湯に入るのは理解しがたい人もいるかもしれないが、私はとろけ、日々の疲れも癒された。
温泉でほどよくいい香りになったので、バスで本庄駅まで帰る。このまま帰ることもできたのだが、高崎駅に寄ることにした。その目的は…
朝鮮飯店のカルビラーメンである。
朝鮮飯店とは群馬県にのみ出店しているローカル焼肉チェーン店で、とにかく美味しいと評判を聞いていた。そして1年前くらいに初めて食べたのだが、私は朝鮮飯店のとりこになってしまった。朝鮮飯店のカルビラーメンは美味しいと聞いていたが、焼肉とラーメンを同時に食べられるほど食が太くないので、いつもはカルビスープにしていた。しかし、今日こそはカルビラーメンを食べるぞ。
カルビラーメンだけ頼むのも忍びなかったので生ビールも頼んだ。
うん。カルビラーメンとビールの相性はバッチリだ。うまい!うまい!辛さと旨さが絶妙で本当に美味しい。
あっという間に完食してしまったがおなかいっぱいで、これで焼肉も食べるとなると胃の調子が狂ったと思う。
温泉で汗を流したところまた汗をかいてしまったが後悔はしていない。満足しながら、帰路につくことにした。
撮影日:2022年6月26日